「目からうろこが落ちる」ということわざは、何かがきっかけになって、急に物事の実態などがよく見え、理解できるようになるということですが、元々はこんな真実の物語があるのです。
時は西暦33年(推定)頃のイスラエルにまでさかのぼります。
当時、イエスキリストが十字架で死んだ後でしたが、イエスの教えは消滅するどころか彼の弟子達によって爆発的に人々に広まっていました。
ユダヤ教の国イスラエルは、イエスの新しい教えが広まる事を恐れ、それを阻止しようとしていました。
熱心なユダヤ教徒であったサウロという青年が、イエスの弟子達を見つけ、逮捕する許可をもらいました。
そして、それを実行するため彼は仲間とともに、ダマスコという町へ近づきました。
その時のことです。
突然天から強烈な光がサウロを照らしました。
それがあまりにも強烈な光だったため、彼は倒れてしまったほどです。
そして「サウロ、サウロ。なぜ私を迫害するのか」という声を聞いたのです。
サウロは、姿が見えないその声にむかって「あなたはどなたですか。」と聞きました。
するとその声は、「私は、あなたが迫害しているイエスです。町に入りなさい。あなたのするべきことを告げます」と答えたのです。
しばらくして、サウロはようやく立ち上がることができるようになりましたが、その時彼の目は全く見えなくなっていました。
サウロは、仲間に手を引かれダマスコに入りましたが、もうイエスの弟子の逮捕をすることのできない状態になっていました。
そして3日間食べる事もできず、ひたすら祈る日々を過ごしました。
さて、その町にアナニヤというイエスの弟子がいました。
イエスはアナニヤに幻の中で現われ、「サウロのところへ行きなさい。サウロに手を置いて祈ると、目が見えるようになる」と言われました。
しかし、アナニヤは、自身がサウロに追われている立場であり、のこのこ出かけていけば逮捕されるのは明らかであることを知っていましたので、彼のところへ行く事を非常に恐れました。
それでもイエスが「行きなさい。サウロは私の教えを、外国人や王様、そしてイスラエルの人々に広める者となるのです。」と言われたのです。
アナニヤはこの言葉を信じて、危険も顧みずサウロに会い、これまでのいきさつを話し、彼のために祈りました。
その時、サウロの目からうろこのようなものが落ちて、目が見えるようになったのです。
今までサウロは、イエスの弟子を迫害するものであったのですが、この時から心の目も開けられ、人生が変えられて、イエスの教えを広める者となりました。
彼は劇的に、これまでの自分の間違った考えや行いに気づかされ、真実の道を歩むようにされたのです。
(後に彼はパウロと名前を変え、聖書の執筆に携わっています。)